日本語の情報もちらほら出てきましたが、どうも2018年5月4日付でインドネシア産のサンゴ(イソギンチャクも含む)が輸出禁止になったようです。ちなみに、サンゴについてはいわゆる土台付きのサンゴについても輸出禁止だそうです。

 

業界では「サイテス(CITES)が下りない」という言い方をするらしいのですが、要はインドネシア当局がサンゴの出荷を禁止したため、日本を含む世界各国でインドネシア産サンゴの流通がストップしたとのことです。

 

このことについて、一体なにが起こっているのかreefs.comに書かれていたので要約してみました。

そもそもCITESとは?

海水魚やさんに足繁く通ってる方なら、お店の方から「サイテス(CITES)」という言葉を聞いたり、あるいはネットで見たりすることもあるかと思います。

 

CITESとは、Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)の略ですが、一般的にはワシントン条約という通称の方が馴染み深いかもしれません。

 

ワシントン条約とは、簡単にいえば絶滅危惧種を含む野生の生物が、過度に採取されることで自然体系を壊すことがなく、また保護することを定めた条約です。このワシントン条約には保護すべき種の名前が(基本的に)学名で記載されており、ネット検索で調べることができます。

 

では、どのような種がワシントン条約にあるのでしょうか。

 

CITESの検索ページで実際に例えば深場ミドリイシのスハルソノイ(Acropora suharsonoi)を検索すると、条約に記載された日付などをしらべることができます。

 

 

ここで調べればわかりますが、ほぼ全てのサンゴが(加えて産地が)ワシントン条約の保護下にあることがわかると思います。

Indonesian Coral Ban

さて、この噂について何か情報源がないかとしらべていたら、reefs.comというページにこのことについての記事が掲載されていました。

 

 

「インドネシアのサンゴ(採取)禁止」というなんとも刺激的なタイトルです。

 

また、実際にインドネシア政府が該当者向けに出した通達のコピーも掲載されていました。

 

超要約ですが、インドネシアの複数の政府機関が、サンゴのCITESと検疫に関する証明の発行を当面中止し、その一方で問題解決に向けて調整を行っているということです。

 

さて、この通達が掲載されていたページには、著者による見解がいくつかかいてありましたので、それについても簡単にまとめてみたいと思います。

What does this mean for us? (このことは何を引き起こすのか)

簡単に書くとこんな感じでしょうか。

  1. インドネシアゴールデントライアングル(バリ付近)で取れるサンゴ類の8〜9割が禁輸となるため、(記事を書いている人が居住している)アメリカにある問屋(Wholesale)、および小売(Retail)の大半が打撃を受ける(直訳すれば大抵が倒産する)。
  2. このことから、合衆国にあるサンゴの価格が急上昇することになる。
  3. 従って、多くの問屋がサンゴの養殖場(直訳すれば「海中牧場」)を開拓し、多くのサンゴを養殖せざるを得ないだろう。もし自宅ですでにフラグ(サンゴの破片の方)を作っている人がいるのであれば健闘を祈る。

日本はインドネシア以外のルートも確保されているので、これほど極端なことは起きないにしても、規制強化が原因による市場の衰退は免れないかもしれませんね。

What may have caused it? (原因は何か)

  1. 政治問題。政府が賄賂を欲しがっているから。不確かな情報だが、海洋環境省の担当だがCITESは担当していない女性がこの問題を引き起こしたと言われている。
  2. アメリカのガレージショップのように、インドネシアにはサンゴを不法に採取し、いくつかの塊に分け、土台につけることで養殖し販売している人たちがいる。このような人たちを摘発したいから。
  3. インドネシアは本気で海洋資源の回復を願い、実現しようとしている。

もっともらしいのは、1だと主張する人もかなりいるようです。日本も偉そうなことはいえませんが、まだまだ袖の下が重要なのでしょうか。

 

また、著者は

 

インドネシアの複数、おそらく2つの政府機関の間で起きている衝突が今回の原因であり、間も無く解決されると考えられる。しかし、最近おきたフィジーとハワイの問題と同じく、インドネシアのサンゴを未来永劫見ることができなくなるかもしれない。結果はだれにもわからないし、予測もできない。

 

とかなり悲観的な見方をしているようです。

 

一方、日本の問屋はかなり楽観視しているところが多いようです。

インドネシアに関してはこんなことは日常茶飯事だから、すぐに解決するよ、という人も実際にいらっしゃったようですが、来年、もしくは来月また同じことが起きるかもしれません。

私たちにできること

もちろん、賄賂を渡すことも、不法採取を助長することもできません。

 

できることは、これまで購入してきたサンゴをより大切に育て、また購入するときにはより一層の愛情を込めて育てる、ということでしょうか。

 

日本ではサンゴのフラグ作成(プラグにサンゴの破片を乗せて育てること)はまだまだ一般的ではないですが、そろそろ真面目に考えた方が良い時期かもしれませんし、もしかしたら時すでに遅しなのかもしれません。

 

しかし、いずれにせよ大切に扱うようにすることが、結果として我々の趣味を趣味として楽しむことができる唯一の方法なのかもしれませんね。