水槽の厄介者であるカーリー、最近になってウミウシの一種で駆除できるという知らせが入ってきました。

海水魚飼育で誰もがいつかお世話になる可能性が高いのがカーリーの繁殖。

魚で厄介なのが白点であれば、サンゴで厄介なのがカーリー。白点はある程度駆除の方法が確立されているのに対して、カーリーの駆除はそれほど確立されていません。

白点が魚にくっついて(というか、基本的には住み着いて)入ってくるのに対し、カーリーもライブロックやサンゴの土台にくっついて水槽に入ってきます。

買った時には問題がないライブロックでも、いつの間にか大繁殖することがしばしば。

どのように予防し、駆除するのが良いのでしょう。動画も交えてご紹介します。

カーリー駆除の新兵器?ウミフクロウ

最近Webで海水関係の情報を調べていたら、面白い記述を発見しました。
出典はビーボックスアクアリウム松戸店のブログから。

ウミウシの一種であるウミフクロウは、カーリーを好んで食べるとのこと。

ほかにも同じような証言がないかしらべてみていたら、葛西臨海水族園のWebでも面白い記述を発見しました。

この記事にある「セイタカイソギンチャク」のことが、いわゆるカーリーのことなのですが、やはり「食べる」と書かれています。

ちなみに、アクアリウムで言うところのいわゆる「カーリー」は誤った呼び方だということです。本来の呼び方は「アイプタシア(Aiptasia)」。その名はレッドシーのカーリー駆除薬でも有名ですね。ちなみに和名で「セイタカイソギンチャク」。

さて、カーリー対策として、一般的にはキャメルシュリンプを導入します。

しかし、実際の所キャメルシュリンプがカーリーを食べたところを見たことがありません。というか、減った試しがありません。

一方、ブログによればウミフクロウによるカーリー駆除は、それなりの効果が期待できるとのこと。

また、Googleで「ウミフクロウ」をキーワードに検索すると、やはりカーリー駆除に期待が持てるとの情報が多数。

新兵器好きの自分としては試さずにはいられないので、早速試してみることにしました。

うちだとコーラルタウンが近くなので、店長さんに電話して問屋にあるかどうか調べてもらいました。
しばらくして返事が来ましたが、時期的に終わりが近いため少々値が張るけど在庫はあるとのこと。

ちなみに、ウミフクロウの流通時期は2月から3月にかけてとのこと。

とりあえず5匹取り寄せてもらうことにしました。

実際は、沖縄でも取れるのでその日に潜ってもらって5匹見つけてもらうことにしました。

2月頃の個体は親指のツメくらいの大きさなのに対し、この記事を書いている4月は4-5cm程度の個体が手に入るらしいです。

なんじゃこりゃ?ウミフクロウとの対面

土曜日にはお店に入荷していましたが、用事があったので日曜日に取りに行きました。
とりあえず、水あわせするためのバケツにいれたところこんな感じ。

水槽の中では結構黙ったままのことが多いですが、いざ動き始めるとかなり早いスピードで移動します。
水槽の中に入れるとライブロックにしがみつきました。

よく見ると心臓の鼓動が見えていかにも生物って感じがするところが興味深いです。

効果のほどは?

さて、カーリーへの効果は?というと...

最初ウミフクロウをカーリーの近くにおいてみたのですが、残念なことにカーリーを避けてしまいました。
1時間ほろいろいろ格闘してみたのですが、目の前では食べてくれませんでした。

しかし翌朝、水槽の中をよく観察してみると、ライブロックと砂底の間に生えていた巨大なカーリーが消滅していました。
90センチ水槽にウミフクロウ5匹の上、動きが気まぐれなので次に食べてくれるのはいつだか分かりませんが、これは期待できそうな感じがします。

しかし、今年の流通はそろそろ終わりになりそうなので、興味がある方は近くの海水魚やさんとか、コーラルタウンとかビーボックスとかにお願いして取り寄せてもらうのが確実だと思います(もちろん、他のお店にもあると思いますが、経験的には沖縄と繋がりが深いお店にお願いした方が入手が確実です)。

ただ、流通も終盤なので、1個体の価格がチョウチョウウオよりも高かったりします(ホワイトソックスよりも安いですが)ので、注文時は単価を聞いておくと良いと思います。

ウミフクロウ飼育の上での注意点

ウミフクロウ飼育の上での注意点。

それは、造波ポンプに注意することのひところにつきます。

ウミフクロウには痛みを感じる神経がないと言われています。

従って、造波ポンプにたどり着き、その軟体の特徴を生かして隙間に入り込み、インペラ(羽)で粉砕されてしまうという事故は後を絶ちません。

当然、このような事態になるとカーリーどころか硝酸塩、アンモニア上昇の原因となる肉片が海水を漂うわけですから、水槽崩壊を招きかねません。

従って、ウミフクロウを入れる水槽では、造波ポンプを止めるか、あるいは別の水槽を用意し、そこにカーリーとウミフクロウを入れるのが良いでしょう。

また、これは同じく熱に対して鈍感なナマコ類も同じなのですが、ヒーターの上に居座ってしまって焼死することもよくあります。

ヒーターを水槽に入れている場合には、ヒーターカーバーは必須です。

通販での入手

ウミフクロウに関しては、通販で入手できる可能性は高いと思います。

ただし、どこのお店でも取り扱っているわけでもありませんし、通販リストに載っているわけでもありません。

割合マイナーな動物なので、顧客からの依頼がないと取り寄せない時もあります。

ただし、数匹(3-5匹)まとめて購入したいということであれば、通販に対応してくれるお店は少なからずあると思います。

ビーボックスアクアリウムや、生麦海水魚センターコーラルタウンなど。

地方でも取り扱いできるお店は少なからずあると思います。

最近は日常的に通販で取り扱っているお店があるようです。

ウミフクロウの実力については様々ですが、実際にカーリーを食べたという報告も上がっているようなので、カーリーに悩まされている方はぜひこの機会に入手されるのが良いと思います。

ウミフクロウ以外の対策は?

じゃあ、カーリーが生えてしまった水槽の対策にはウミフクロウか、それともキャメルシュリンプに頼るしかないのかというと、そういうわけでもありません。

物理的な方法はいくつかあります。

薬品の使用

RedSeaが出している、「アイプタシア」という薬品を使う方法は昔から使われている方法です。

高濃度の液体を注射器に入れ、カーリー全体を包み込むように流し込みます。

カーリーはアイプタシアを吸い込みますが、その成分で細胞が破壊され、再生不能になります(なるそうです)。

ただ、実際カーリーは単為生殖(細胞が一つでもあれば再生可能)の生物に分類されますので、完全に細胞を破壊しきれない限り再発は免れません。

カーリーを駆除する際には、溶けた液体ごと吸い取って、できるだけ水槽内に飛散しないようにするのが良いと思います。

製造・販売元のRedSeaが公式チャンネルを持ってますので、そちらも合わせて見てみると良いと思います。

ライブロックの隔離

単にライブロックにカーリーが繁殖したのであれば、そのライブロックを別の水槽に隔離し、できるだけ光を当てないのが一番確実な駆除方法です。

ライブロックの石灰藻がなくなる…と心配されるかもしれませんが、経験上、石灰藻よりもカーリーの方が先に絶滅してくれます。

ミドリイシがグングン育つ明るい水槽よりも、暗い水槽の方が明らかにカーリーが繁殖しないことからも明らかです。