今、鉄道による貨物運輸といえばコンテナとタンク車が中心であり、かつて(いつだ?)のような様々な種類の貨車を牽引して走る貨物列車を見る機会はめっきり少なくなりました。
そのような中、群馬県の安中駅と福島県の泉駅の間を往復する通称「安中貨物」は、ちょっと異彩を放つ存在です。安中貨物は、両駅そばにある東邦亜鉛の工場間の資材運送に使われています。この編成は、無蓋車とタンク車だけの編成ですが、多くの鉄道ファンの心を掴んでいるようです。
鉄道模型ではこの安中貨物が製品化されることはありませんでした。近年、肖像権が強く意識されるようになってから、たとえ「半官半民」と言われるJRの車両でさえ、製品化されるためには許諾が必要になりますが、キャラクターの版権が絡むような特殊なケースでない限り市販化されるのが一般的です。昨夏は、あの「エヴァンゲリオン」新幹線さえ製品化されました。
その一方、安中貨物については今まで許諾を下ろした会社はなかったそうです。大手企業のオファーに対しても頑なに拒否したという噂さえあります。
しかし、ポポンデッタが「安中貨物の製品化」の許諾を受け、数度の延期を続けながらもついに2017年8月31日、発売されることになりました。
実は見たことがない安中貨物
かつて、僕は毎日武蔵野線の半分を経由して通勤し、常磐線も利用し、そして今でも常磐線を見に行ける場所に住んでいながら、実は今まで一度も安中貨物を見たことがありません。
一時的な中断はあったものの、小学校の頃から今まで鉄道模型は趣味の一つですから、武蔵野線での通勤は様々な機関車を見る良いチャンスでしたし、震災以前の常磐線はそこそこ貨物運輸もありましたので、全く見ない日はない、と言ってもオーバーではありませんでした。
理由はおそらく、時間帯にあると思います。
安中から泉に行く時には、常磐線を深夜に走ることになります。ただ、武蔵野線は20-21時の時間帯のようなので、もしかしたら車窓から見えていたのかもしれません。
逆に、泉から安中に行く時には、真っ昼間(土浦駅発が1404)ですから、仕事などで見る機会もありません。
もっとも、2000年12月のダイヤ改正までは、武蔵野線ではなく水戸・両毛線経由で運行されていましたので(2015年までは隅田川経由)、2000年以前は見る機会が全くなかったのも事実です。
でも、YouTubeや個人さんのサイトで見る安中貨物は何か惹かれるものがあったので、悩んで末に予約することにしました。
ちなみに、個人的には客車よりも貨車類の方が惹かれるんですよね。
なんか編成美というか、一種の美しさというものを感じて。
やっと届いた安中貨物
導入のところでも少し触れましたが、安中貨物はなかなか商品化されずにいましたが、ついに鉄道模型専門店であるポポンデッタが商品化することになりました。
そして、どれくらい待たされたか分かりませんし、発売が12月ごろまで延期になるかもしれないと聞いていたものの、ついに2017年8月31日に発売されることになりました。
その間、発注したポポンデッタ土浦駅店は閉店することになり、巷では製品化は無理なのでは、という噂さえ聞かれていました。
注文も受け取りもポポンデッタだったのですが、商品が届くという連絡は8月30日に受けたので、内部でも連絡が届いてなかったのかもしれません。
そして8月31日。
ポポンデッタつくば店で朝イチに受け取った後、早速レンタルレイアウトで走らせ、映像を撮影しその場で編集して、YouTubeにアップロードしました。
動画には415系も映っていますが、これは自分の持ち込みです。
まぁ、安中貨物を牽引するEH500と時期が違うだろ、というツッコミとかありそうですが、自分の手持ち車輌の中では、地元の九州でもよく見た415系はやはり愛着のわく車輌ですし、ヤフオク!で格安で手に入れつつ、状態がいいもののまだマトモに走らせていなかったので、この機会に走らせて見ることにしました。
が、この時点では不良品騒ぎが起きていたこと、そして翌日にはポポンデッタからリコールが伝えられていたことは知る由もありませんでした。
指摘されるまで気づかなかった製品不良とリコール騒ぎ
店頭での検品から試運転まで
ある方から製品不良の指摘を受けるまで、実は全く不良に気づいていませんでした。
というのは、一部の方の製品は車輪が台車から脱輪していたり、接着剤がはみ出ていたり、ボディがねじれていたりと検品以前の問題があったようなのですが、幸い僕の手元に届いた製品は特に問題がありませんでした。
購入時に製品の確認も行いましたし、その後すぐに2時間近く連続走行させましたが、ポイント通過時やバリアブルレール通過時などに脱線するようなこともありませんでしたので、問題があるとは思いもしませんでした。
ただ、数両、カプラー付近に歪みがあることには気づいていましたが、これは他社の製品でも稀にあることですし、アーノルドカプラーであれば問題になることでもないので、特に問題なしということにしました。
それよりも、やっと安中貨物が届いたという安堵感の方が大きかったのが本音です。
twitterで騒がれていた不良品問題
もちろん、このような状況でしたので、googleであえてキーワード検索することもありませんし、不良品のことを知る由もありませんでした。
しかし、ある方の指摘でtwitterを検索して見たら、様々な不良品事例が指摘されていたのです。
そして、すぐにポポンデッタのウェブページを見たところ、2017年9月1日付で製品回収のお知らせが告知されていたのでした。
このあと、改めて自分が手にとった安中貨物を見て見たら、確かに気になるところが出て来たのです。
前置きが長くなりましたが、それらについてこれから検証してみることにします。
手元の「安中貨物」の状態
タキ1200
自分の手元の製品でも、twitterなどで騒がれている製品でも、不良品や不具合が多いのはタキ1200だと感じています。
例えば、細かいところはいろいろ異なっても、同じタンク車である東邦亜鉛のタキ15600には、あまり不具合は見られません。
これが、製造工場の問題(別々の工場で作っているのか)、それとも原料のプラスチックと配合した塗料の問題なのか全くわかりませんが、確率論的には何らかの要因が噛んでいる感じがします。
もう少し細かく見てみます。
デッキの跳ね上がり
報告事例で多いのが、デッキの跳ね上がりです。
本来はデッキは線路と水平になるはずが、カプラー側が跳ね上がった状態で取り付けられているというものです。
状態が良い商品と比べると、取り付け部分の隙間が明らかに違うのがわかります。
しかし、納品された商品が全てそうかというと、そうではない製品もあります。
不具合のある製品と並べてみると問題点がよくわかると思います。
手すりの歪み
上の写真のように、手すりが歪んでいる車輌もありました。
大手企業のコンテナ車のように、手すりは別部品にして、ユーザが取り付けるようにする方法もあったと思いますが、この製品は工程を減らすためか、デッキ周りを一体成型しているようです。これが仇になったのでしょうか。
ランボードの固定不良
ランボード(高所作業時に作業者が歩く場所)が簡単に取れる車輌がありました。
しかし、最初ははめ込み式になっていて、それが不十分なんだと思っていましたが、どうもこの部品は接着してあるようなのです。ひどい方になると、むしろ接着剤がはみ出るほど塗布されている例もありました。ちなみに、上の写真でも右から2つ目の穴には接着剤を使っている痕跡があります。
一応、手元の車両はもう一度しっかりはめ込んであげると取れにくくなりました。
カプラーの歪み
写真のように、カプラー本体というか、カプラーボックスに問題があるような車両(というか台車)がありました。
ただ、連続走行して途中で連結が外れたり、カーブやポイントでトラブルが起きるということはありませんでした。
トキ25000とタキ15600
トキ25000とタキ15600についても触れる点はあるのですが、長くなるので別の機会にしましょう。
今後の対応について
ポポンデッタの対応
先のリンク先でも触れましたが、ポポンデッタの今後の対応としては、一旦製品を回収し、修繕ののち返却するということにするということでした。
また、販売店によっては自主的に販売自粛を行なったところもあるようです。
ポポンデッタのリコール告知については、告知不十分なところがあるように思われます。
もちろん、購入した不特定多数の方に対して告知を行うことは不可能ですし(ユーザ登録制度が必要になり、それを実施すればコストアップにつながる)、大手でもWebで告知するだけ、というのが実情です。
ただし、告知文を読む限り、誰を対象にしているのかがいまいち不明なのが気になるところです。
つまり、購入者全員なのか、通販で受け取った人なのか、などです。
このあたりはもう少しきっちりと告知してほしいと思います。
個人としての対応
車のリコールは何度も当たりましたが、模型のリコールは初めてなので、どのように受け取れば良いのかわからないのが本音です。
ただ、ポポンデッタのWeb告知を読んでも釈然としないところがありますし、ここで触れたような内容でも返送対象になるのかどうかも釈然としないので、告知後の平日となる明日問い合わせてみたいと思います。
(9月5日追記:実際に4日に電話で問い合わせて見ました)
一旦まとめ
残り二形式の実例とポポンデッタの対応については改めて報告したいと思います。
正直なところ、1/150スケールのモデルで、しかも生産量が限られたモデルに対して精度を求め、また大手と比較するのも酷だと思うのも正直なところです。Nゲージの醍醐味は、もちろん個人の違いはありますが、走らせる楽しみにあると思いますから、あまり細かいところに突っ込んで幻になるよりも、走行に問題がなく、ある程度許容できる範囲におさまればそれでいいとも思います(ただし、6両全ての仕上がりが異なるような状態であると、製造ライン的には問題アリですが)。