きょう、新しい商品を見つけてきました。
香港製のドーシングポンプです。
ドーシングポンプとは、規定量の液体を、決まった時間や回数送り出すポンプです。
アクアリウム業界では、添加剤の自動添加に使われています。
さて、アクア界のドーシングポンプというと、アクアトロニカ、グローテック、バブルマグナスなどが有名ですが、いずれも4万円以上します。もちろん、性能や機能がすばらしいのですが、いまの為替レートを考えるとあと3割くらい安くなってもいいように思えます。
ドーシングポンプが高くなってしまう理由は、ペリスタリチックポンプ(チュービングポンプ)の価格が高いことにあります。理学実験用のものだと、ピコリットル単位で制御できなければなりません。また、アクア用の、1ml単位で精度もそこそこというポンプは余り需要がないのもその理由かもしれません。
このような状況の中、LSS研究所が香港製ですが格安のドーシングポンプの販売を始めたようです。
LSS研究所は社長の岡部氏自身がtwitter(@lss_laboratory)でいろいろな情報を発信しています。
いまは出張で中国方面に出かけてらっしゃるようですが、香港でドーシングポンプを40個ほど買い付けたとのことです。
社長はまだ中国ですが、ポンプは既に日本国内に輸入され、電源、説明書とも準備されているようです。
ということで、早速ポンプを取り寄せてみることにしました。
販売価格は8,000円です。ただし、ポンプ1台分の価格です。
小さな動物園-ポンプ本体
ポンプ本体です。当初の予想より少し大きめです。
でも、ポンプ本体はかなり軽いです。
あと、ポンプは集中制御をすることができません。
各々のポンプを個別にプログラムする形になります。
このポンプ3台で23,400円(2台目、3台目はACアダプタ不要なので少し安いようです)。
バブルマグナスが3台分で40,000円。ただし集中制御可能。
どちらを取るか悩むところです。
使う前に設定が必要です。
必要な設定は
1)ポンプの校正
2)ポンプを動かす間隔と滴下量
の2つです。
残念ながら、現在時刻の設定が行えません。
おそらく、電源を入れた瞬間をスタート時間とし、そこを基準にポンプを動かす時間を決めるようです。
小さな動物園-モニター
本体上面には7セグメントLED表示器が4つ備えてあり、滴下量と間隔を設定します。
上記の設定だと、1時間毎に15ml滴下するようになっています。
小さな動物園-ポンプ拡大
ペリスタリチックポンプ部分です。
エレメントなどのボトルから引き出したチューブを右側のコネクタにつなげます。
規定量の液体が左側のコネクタから出てきます。これをサンプなり水槽に延長することで添加します。
ちなみに、LSS研究所では、チューブをサンプや水槽に固定できるような部品も作っているようです。
さて、まずは校正作業を行います。
小さな動物園-校正
校正する際は何らかの液体を使って校正することになります。
校正のためのメスシリンダは製品に付属しています。
ここでは、サンプの海水を使って校正してみます。
サンプから伸ばしたホースをポンプの右側に接続します。
ちなみに、ペリスタリチックポンプはその構造上、呼び水が必要ありません。
ポンプを動かすことで揚水してくれます。
最大揚水高は1.5メートルのようです。
小さな動物園-校正2
ディスプレイ左上のボタンを数秒押すことで校正モードになります。
校正モードにしたら、ディスプレイ右上のボタンを押して、マニュアルでモーターを動かし、ホース内を液体で満たします。
上の写真では、ディスプレイに「6710」と表示されていますが(説明書では5810でした)、これは「67単位」モータを動かすと「10ミリリットル」という意味です。
校正モードでは、この「67」という値を変更することで、10ミリリットル正確に出せるように校正します。
小さな動物園-校正中
校正中の様子です。
数字を変更すると数秒後に液体が出てくるので、付属のメスシリンダで計量します。
10ミリリットルより多い場合は数字を少なく、少ない場合は数字を大きくします。
ちなみに、校正中は一定の時間で常に液体が出るようになっていますので気を付けてください。
校正が終了したら、再度左上のボタンを長押しして終了します。
小さな動物園-裏面
本体の裏を見ると、壁掛けのための穴が二ヶ所ありますので、壁掛けでつかうこともできます。
ただし、本体の足が長いので、壁掛けに使うねじもそれなりに長くする必要がありますが....
我が家での利用方法ですが、まずは液体フードの定期添加に使ってみようかと思います。
プランクトンをそのまま使った物だとプランクトンが沈殿するので使いにくいですが、レッドシーのコーラルグロのような製品であれば使えると思います(本来は要冷蔵ですが...)
このポンプが安価に作れる理由は、一つは経済力の違いもあるのでしょうが、ポンプ本体にDCモータを使っているところにありそうです。おそらく、ですが、高級なポンプだと1/100度(角度)単位で回転を制御できるモータ(ステッピングモータ)を使っていると思われます。ステッピングモータとは、普通のモータと違い、パルス状の電流を流すことで動かすことができるモータです。たとえば、1回パルスを送ると1/100度回転する、という具合です。ステッピングモータの分解能(角度の刻み幅)が細かいほどより正確に液体を計量できますが、その分価格が高くなります。
一方、DCモータの場合は、単体では回転角の制御ができません。なので、DCモータを使ったポンプの場合は、モータを回す時間を変更することで、滴下する量を決定しています。
この製品ではDCモータを使っているので、滴下のバリエーションがやや限定されてしまうようです。
しかし、考え方によっては十分な性能だと思います。
さて、このポンプに注文を付けるとすると...
1)本体をもう少し小さくしてほしい
工学の性というか、趣味というか、早速分解してみました。
中身はモータと名刺サイズの基板のみ。
できれば、もう二回りほど小さくしてもらった方がコンパクトでよいと思います。
2)時刻設定ができるようにしてほしい
制御するマイコンに計時機能を搭載し、決まった時間に滴下できるようにできればかなり便利だと思います。
RTC(リアルタイムクロック)と呼ばれる、マイコンの外部に接続する精度の高い時計でも売値で500円程度ですし、RTCを使えば停電したあとも正しい時刻を刻めるので、ぜひ搭載してほしいと思います。
3)滴下スピードを調整できるようにしてほしい。
この製品は、滴下スピードが一定のようです。
また、やや滴下スピードが早いような気がします。
たとえば、水槽水にマグネシウムエレメントを添加することを考えると、滴下中に一部が塩化マグネシウムとして沈殿してしまう可能性が高いです。
滴下スピードを設定できれば素晴らしいですが、そうなると高いモータを使わざるをえないので、モータの回転数をやや落として、もう少しゆっくり滴下できるようにしてもいいと思います。
いずれにせよ、8,000円でドーシングポンプが入手できることは素晴らしいと思います。
デメリットはあるにせよ、単体で使えることを生かして、有効な使い方を生み出せればと思います。