パッキングの袋から放たれたその場所は、休むことなく波が打ち付ける、太平洋に面した或る磯だった。
東シナ海に面した穏やかで、しかし夏には容赦ない日差しと台風が作り出す荒波にもまれる、小さな島のタイドプールで掬われた自分は、水槽という小さい世界に閉じこめられながらも、日々の食料に困ることはなく、また外敵の恐怖におびえることもなく、いわば平和な暮らしを続けていたつもりだった。
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普段小説を読まず、また登場人物が5人を超えるドラマが苦手な自分には、これ以上の文章は書けません!
何があったかといいますと、いまや暴君となってしまったメジナをひたちなか市の阿字ヶ浦に放流してきましたということでございます。
一時はサンゴ水槽のリフ槽に入れられながらも、魚水槽が立ち上がったらそちらに放流しました。
しかしそれが大きな間違いで、新しく入れた魚を威嚇し、執拗に追いかけるようになってしまいました。
一度採取し持ち帰ったからには最後まで飼育する責任はあるのですが、新しく入ってくる魚をことごとく脅かし、その結果ストレス死させてしまう現状を考えると、新しい魚を入れることそのものが罪を犯すことになってしまいます。
色々悩んだのですが、日本に最初から住み着いている種ということもあり、メジナを太平洋に返すことにしました。
問題はどうやってとらえるか。
メジナが他の魚を執拗に追いかけているときには様々な手段で威嚇していたので、網などで簡単に捕まるとは思えません。
メジナの口にしか入らない大きさの釣り針で釣ることもマジメに考えましたが、それこそ餌取りのスズメダイが針に着いた餌を食べていってしまうことも考えられるので却下。
結局、産卵ボックスを使ったトラップを仕掛け、そこに入ってくるのを待つことにしました。
以前、ミゾレチョウの白点治療を行うために同じようなことをやったのでそれを紹介しようと過去の記事を探してみましたが見つかりませんでした。
どのようにやったかと言いますと、産卵ボックスを水槽面に斜めに取り付け(つまり、左側は水面より上にくるようにして、右側は水面下5センチくらいまで沈める)、ボックス内に餌をおき、ひたすら待つだけです。
最初はスズメダイ、次はバートレットアンティアス、でウズマキと関係ない魚ばっかり入ってきました。
なかなか入らないなとおもいつつ、ヤフオクで落札のタイミングをねらっていたそのとき、メジナの空だが半分ほど産卵ボックスに入ったのです。
それを目にした瞬間、左手で産卵ボックスにフタをして、暴れるメジナが飛び出さないよう注意しつつ、右手で近くにあった産卵ボックスが入る程度の箱に海水を入れ、産卵ボックスごとその箱にメジナを入れました。
しばらくは暴れていましたが、全体にタオルを掛け暗くすると、程なくおとなしくなりました。
さて、これからどうするか。
1)スドーのLサイズ産卵箱で飼う
2)比較的小さい3本目の水槽に入れる
3)海に戻す
の3つが思いつきました。
時計を見るとまもなく24時。
いまから海にむかったとしても、最低40分はかかります。
しかし、1)と2)は現実的ではありません。
その一方、ZEO水槽は硝酸塩が検出され、水換えを行いたいと思っていたところでした。
これらを総合的に整理した結果、「メジナを海に帰すついでに40リットルほど海水を汲んでくる」という結論になりました。
しかし、行き先は漁港であってもさすがに新月の夜に一人で海のそばまで行くことについて、両親が黙っていませんでした。なんと、父親がついてきたのです。
あいにくパッキング用の丈夫な袋はすべて処分していたので、適当な袋を重ねてパッキングしました。
あとは海水を入れるためのポリタンク2つと道具をそろえて一路阿字ヶ浦へ。
深夜の常磐道を北へ北へと向かいました。
道中は楽勝だったのですが、海水を汲むのにいいポイントがあるのですが、なにせうろ覚えだったのでそのポイントを探すのに火なりの時間を費やしてしまいました。
で、やっとのことで漁港を発見。
まずはメジナを放流。
黒い上に新月なのでどこを泳いでいるのかまったくわかりません。
しかし、よく考えれば6ヶ月も飼育していたんですね。
最初は小指ほどの大きさだったのが、いまや豆アジよりも大きくなってしまいました。
次に海水のくみ上げ。
試しにMJ-1000とホースで揚水できないか試してみましたがやはり無理でした。
しかし、車にはいつも磯採取用具が載っているので、そこからビニール製の「魚籠(びく)」を取り出し、これを使って海水をくみ上げることにしました。
まず一杯目をくみ上げ、水銀灯越しに海水をみて濁りのチェック。
濁りはなく、また油も浮いていませんでした。
また、汲んだ海水をちょっと飲んでみましたが、酸味や臭さはないのでここで汲むことにしました。
で、話は帰宅後に飛びます。
自宅に着いたのは午前2時30分。
父は既にねています。
しかし、汲んできた海水は人工海水と違いプランクトン類が入っているので、放置することはできません。
なので、早速水換えを実行することにしました。
一応硝酸塩類のテストを行ってみましたが、さすが海水。全く検出されませんでした。
ただ、先日の大雨のためか、多少比重が低くなっているようです。
例のドミノ式換水ですべてがおわったのは午前4時。
疲れましたが少し安心しました。
ここまでおつきあいいただいた皆さん、どうもありがとうございました。