海水魚飼育において、水質検査を自分で行なった場合に調べる項目は多岐に渡ります。

アンモニア(NH3/NH4)、亜硝酸塩(NO3)、硝酸塩(NO2)、リン酸(PO4)、KH、カルシウム(Ca)。
さらにこだわる方だとカリウム(ポタシウム、K)、鉄(Fe)、ヨウ素(I2)など。
その中でもKH、リン酸、カルシウムはよく計測する項目ですが、試薬を用いた比色(ひしょく)方式だと判定に困ることも多くあると思います。

そこでおすすめなのが、機械を用いた測定。

今回はKHの測定について、ハンナのHI755(ppm表示モデル)で実例を紹介したいと思います。

HANNA HI755&HI772

ハンナのHI755(ppm表示)やHI772(dKH表示)は、マリンアクアリストの中でもよく使われる測定機器だと思います。

 

基本的な原理は吸光式といって、試薬を入れたボトルにある波長の光を通し、それが試薬によってどの程度吸収されているのかについて測定し、ppm(HI755)あるいはdKH(HI772)の形で表示するというものです。

 

試薬を使った測定の場合でも、多くのKH試薬は一定量の海水に試薬を1滴づつ滴下し、試験水の色が青色から黄色に変わった瞬間の滴下量からアルカリ度を測定することが多いと思いますが、1dKH単位の測定ならまだしも、0.1dKH単位の測定となると、試薬の色の変化がわかりにくく、結果の判定に困ることも多いと思います。

 

それに対してHI755やHI772は、試薬を入れてボタンを押すだけで、その海水のアルカリ度を一発で表示してくれます。

もちろん、ある程度の誤差というのはあるわけですが、色味の判断に迷うことなくアルカリ度を表示してくれるというのは助かります。

 

HI755やHI722の公式ページをみても以下のような項目が特徴として挙げられています。

  •  目視検査でなく信頼性の高いデジタル表示なので安心
  • デジタルの測定器としては驚きのコストパフォーマンス
  • 手のひらサイズで持ち運びや保管もラク
  • ボタン1つの簡単操作で初めての方でも安心
  • HI 755は海水用(単位はppmで炭酸カルシウム換算)
  • HI 772は海水用(単位はdKH)

僕がHANNAのアルカリ度チェッカーを購入したときには表示単位がppm(炭酸カルシウム換算)のものしかありませんでしたが、現在はdKH表示も販売されており、またppmからdKHの変換計算を行う必要もないので、特段の理由がない限りHI772をお求めすることをお勧めいたします。

 

HI775を使ったアルカリ度測定の実例

電源の投入

まずは電源を投入します。
本体下部のボタンを押すと上の写真のような表示になります。
しばらくすると液晶の表示が「Add C1」という表示にかわります。
この状態は、試薬を入れない状態での試験水(海水)を入れることを指示しています。

試験水の測定

次に、試験水の測定を行います。

これは、試験水に濁りなどがあった場合にその影響を考慮するための呼び測定です。

まずは、専用の試験管に試験水(海水)を10ml入れます。
このとき、シリンジ(注射器)で10ml測定するのではなく、試験管に引いてある10mlのラインまで試験水が入るように注意します。
また、表面張力の影響も考えて、水面の一番下部が10mlのラインに揃うように注意してください。
次に測定器のふたをあけ、今海水を入れた試験管を本体に入れます。
できれば、試験管を入れる前に綺麗な布で試験管を拭い、指紋などの汚れを落としておくと良いでしょう。
試験水を入れ、ふたを閉じて再度ボタンを押すとキャリブレーション開始です。
5秒ほどでキャリブレーションは終了し、液晶の表示が「Add C2」へとかわります。

試験液の滴下

キャリブレーションが終了したら、一度試験管を測定器本体から取り出します。
その後、専用の試験液をシリンジ(注射器)を使い、正確に1ml吸い出します。
次に試験管に1ml吸い出した試験薬を入れ、試験管を軽く振り試薬が完全に混ざるようにします。
海水は試験薬の色によって青く変化します。
測定では、この青みの違いを光を用いてアルカリ度を測定します。

アルカリ度の測定

試験管を再度本体にいれ、ふたを閉じ、本体のボタンを一度おします。
液晶表示が「—」になり、アルカリ度の測定が行われます。
ほんの数秒で測定は終了です。
測定結果はppm(HI755)もしくはdKH(HI772)で表示されます。
僕が持っているモデルはppm表示のため、ここからアルカリ度の単位変換を電卓を使って行います。
ppmをdKHに変換するには、表示結果に0.058を掛けます。
液晶表示は194ppmですが、0.058を乗じると11.252dKHという結果になります。
ここまでの測定ですが、慣れればほんの5分もかからずに測定終了です。

まとめ

アルカリ度の測定は、従来の比色方式でも一試薬だけの測定ですので、海水水槽管理においても比較的簡単な計測方法なのですが、ミドリイシ(SPS)飼育のように厳密さを求めれば求めるほど、最終結果の色味判定が難しくなります。

 

1dKH単位の試薬であれば、試験水の色が青から黄色に変わった瞬間の値を採用すれば良いのですが、RedSea コンプリートリーフケアプログラム(RCP)のアルカリ度測定のような精密な測定では、色味の変化がなだらかなため判定が難しいというジレンマを抱えてしまいます。

 

その点、機械測定を用いればボタン一つで測定可能ですし、測定誤差も少ないため、安定した測定結果を得ることができます。

 

初期投資こそ13000円ほどかかりますが、試薬そのものは25回測定用で1500円なので、一回あたり60円で測定することが可能です。

 

もし、アルカリ度測定において色味の変化に悩んでいる方がいらっしゃったら、ぜひ機械測定を使ってみることをお勧めします。