たまには音楽の話を。
イタリアの作曲者オットリーノ・レスピーギの曲が非常に好きで、とりわけローマ三部作についてはCDに穴が開くくらい聴き込んでいます。
レスピーギの曲は非常にわかりやすく、叙情的な曲が多いので、普段クラシックを聴き慣れていない方にもオススメできる作曲者の一人です。
最近はCDも安くなったので、ローマ三部作が入ったCDを見つけると購入し、気づいたら13枚以上持っていました。
実際、ローマに行く機会があった時には表題となった12カ所を訪れ、感慨にふけたものです。
聴き比べのため同じ曲名(で違う指揮者・演奏者の曲)のCDを買うことはよくありますが、さすがに13枚というのは他にはありません。
次に多いのがガイーヌの5枚かな?こちらは入手の困難さも伴いますが。
ローマ三部作の中でもとりわけローマの松、そしてアッピア街道の松が好きなのですが、なぜそこまで好きなのかというと、勇ましい曲の中にも緻密に計算された音作りがあるからなんだろうと思います。
ローマ軍の足音を示すコントラバスやピアノによる八分音符の刻みの音程も曲を通して変化し、不安定な響きから安定した音程へと変化することによって、古代ローマ軍の繁栄を示しています。
また、レスピーギの曲の特徴に多彩な和音を使うことで音の広がりを作っている点があります。
アッピア街道の松でもパイプオルガンを使い(会場の都合で省かれる場合もありますが)、はやり半音刻みで展開される和音構成の変化が心理的な安定感を与えてくれます。
スコアを見る限り、同年代の曲としては大胆ではあるものの非常にシンプルな構成の曲なのですが、実際演奏するとなると話は違うようで、13枚CDを聴き比べても納得できる演奏を行っているのはほんの数枚しかありません。
また、実際にホールに足を運び生演奏で聴いたことも2、3回ありますが、残念ながら納得できる演奏ではありませんでした。
もちろん、撮り直しの効くレコーディングと一発勝負のライブ演奏では完成度が異なるのは当然ですが、レコーディングでも納得できる演奏が少ないのはそれだけ表現が難しい曲の一つである証拠なのかなと思っています。
さて、そんな演奏の中からライブ演奏であり、演奏時間が限られていながら、知りうる限り最高の演奏をしている音源がYoutubeにありました。
テレビ東京が年末に行っているジルベスターコンサートからなのですが、2007年から2008年への年越しでアッピア街道の松を演奏しています。
ジルベスターコンサートでは年越しの曲の演奏終了が新年0時ちょうどに終わらなければならないという挑戦があるのですが、その曲としてアッピア街道の松が取り上げられました。
アッピア街道の松は曲の最初から最後まで一定のテンポで演奏するため、逆算すれば時間ちょうどに終わらせることも不可能ではないのですが、とりわけ曲のクライマックスになり、様々なパートが演奏を受け持つあたりになると演奏が空中分解することもよくあります。
しかし、この演奏では演奏が熱くなってもテンポが一定にキープされています。
この辺りは指揮者である尾高忠明氏の技量が遺憾なく発揮されているところです。
アッピア街道は「すべての道がローマに通ず」と言われた道のうち最も初期に建設された道の一つです。
こちらの紹介はまた後日写真を交えて行いたいと思いますが、まずは演奏をお聴きいただき、古き石畳とそれに沿って何百年間も街道を見守り続けた松に思いを馳せていただくのはいかがでしょうか。