さて、トリコディナ対策をいろいろと考えて調べていたのですが、その過程でバチルス菌を使うという話が出てきました。
バチルス菌というと聞きなれませんが、納豆菌(Bacillus subtilis var. natto)がそのバチルス菌に属する株の一種です。
納豆菌というと、シュリンプとか淡水魚をやっている人なら聞きなれているかもしれませんが、水の浄化作用に非常に有効に働くと言われている菌です。
また、(一般的な水棲生物から見て)無害なため、「酸欠」だけに気を付ければ安全に使うことができます。
アクア領域での一般的な納豆菌の利用は前述のような水の浄化のようで、これは納豆菌がタンパク質などを分解する能力に長けている、ということから来ているようです。
ここで注意しなければならないのは、「納豆菌は硝化作用を持たない」ということです。つまり、納豆菌がタンパク質を分解して生成するのは有害物質である「アンモニア」であるということです。
さて、納豆菌に注目したその理由は、「増殖スピード」にあります。
納豆菌は30分で2倍に増えると言われています。
トリコディナ菌の正確な増殖スピードが分かりませんが、それに匹敵するスピードだと思われます。
ということで、病原菌が発生している水槽に納豆を入れることで、トリコディナ菌などのウィルスを駆逐する(正確には常在状態まで戻す)ことを試みている人がいるようです。
ということで、さっそくうちの水槽でも納豆菌を使った方法を試してみたいと思います。
ただし、注意しなければならないのは、
○納豆菌それ本体の増殖によって通常の硝化細菌まで駆逐されてしまう可能性があること(しっかりとて安定して運用できている濾過設備があること)
○納豆菌は好気細菌のため、海水に十分な酸素を供給できる設備(スキマー、エアレーション)があること
○トリコディナ菌が駆逐されたかどうかを視覚的に確かめる方法はないので、最終的にはパイロットフィッシュなどで確かめるしかないこと
などに気を付ける必要があります。
さて実行にあたり、納豆のにおいによる家族からの苦情なども考えて早朝から実施したかったのですが、なんやかんやで実施できたのは15時からでした。
まずは納豆の選択。
小さな動物園-くめ納豆
使った納豆はくめ納豆です。
いつもよく食べる納豆です。
納豆菌にはいくつかの種類があるようですが、ほとんど違いはなく、味の違いは豆の違いだと言われているようです。
したがって、どの納豆を使っても違いはないと思います。
ちなみに、うちの水槽は600リットルですが、納豆は1パック使いました。
先ほども触れたように、納豆菌も酸素を消費する上、猛スピードで増殖するので、水槽のサイズに合わせて投入する納豆の量を変化させる必要がります。
小さな動物園-くめ納豆中身
くめ納豆の中身です。
シートとたれは取ります。
シートについた納豆菌まで使いたい場合は残してもいいと思います。
小さな動物園-撹拌
フタを切り取り、プラケースに入れたままよく撹拌します。
混ぜても混ぜなくても納豆菌の働きには大きな変化はないのですが、撹拌しておいて納豆菌の含まれたあの「ネバネバ」部分を水槽に溶かすためにはかき混ぜておくのがいいと思います。
小さな動物園-袋詰め
ある程度かきまぜたら、網に入れてサンプに入れます。
この時、かきまぜるのに使ったプラケースもいっしょに入れておきます。
小さな動物園-サンプへ
あとはこんな感じでサンプに浮かべておきます。
時々振って、大豆表面に残った納豆菌を海水に溶かします。
大豆そのものはそのうち腐れてしまい、アンモニアの元になってしまいますから、数時間で取り出してしまった方がいいと思います。
さて、納豆菌がどの程度活躍しているかですが、残存酸素容量(ORP)でしか計測できません。
ちょうど、うちのシステムにはアクアトロニカのORPモニタを付けているのでそれで確認してみました。
納豆投入直前 15時43分 209mv
21時45分現在      179mv
6時間で30mv低下しています。30mvの低下がどの程度の繁殖力の低下なのかわかりませんが、確実に繁殖していることは間違いないようです。
ORPは納豆投入直後から低下していました。
しばらくは、生き残っている生体の様子とORPの様子を見守りたいと思います。
ところで、多くの魚たちが連続して死んでしまっていった時期、ORPがある日大木な谷を付けたあと元にもどり、200mvから100mvまで下がっていった時期がありました。
いま思い返せば、この時期はトリコディナ菌などが活発になっていた時期と重なります。
為替などの相場で、その瞬間の動きだけでは全体の動きはわかりませんが、継続してみておくことで水槽の異変により早い時期から気づけたのかもしれません。
いつもながらに、続きはまた今度ということで。