天然海水と天然濃縮海水と人工海水、どれが一番いいかと聞かれると、なかなか難しい所です。
緊急時に欲しいのであれば天然海水。RO水精製とエアレーション(半日)を考えると汲んできた方が早いです。あとは海に行ったついでにお持ち帰りなど。
水槽立ち上げには濃縮天然海水。もちろん、天然海水を20リットルポリ缶10本に詰めて持ってかえってきてもいいでしょうが、大人3人分の体重分車の燃費が悪くなります。
普段は人工海水でしょうね。
ここで、一応各海水を定義しておきましょう(理系なので...)
天然海水   → 海で汲んできた海水のうち、防波堤などから自分で汲んだ海水
天然濃縮海水 → 海で汲まれた海水を、10倍に濃縮したもの。当然業者が製造。
人工海水   → いわゆる「塩」。銘柄は様々だが、うちはRedSea Pro Saltなのでそれ。
それでは、個別の感想を。
天然海水

天然海水の利点は、基本的に無料、汲み放題、本当の海水、プランクトンが豊富、栄養塩が少ないという利点があると思います。
ただし、欠点と表裏一体です。
、地域によってはガソリン代・高速代が高く付く、必ずしも生体に適した海水ではない、以外に残存酸素容量が少ない、雑菌が入っている可能性が高い、内海や漁港の中だと栄養塩が高い可能性がある等々。
先日、メジナ放流ついでに海水を汲んできました。そのときの感想を上の条件に入れると
代金:高速往復1800円、ガソリン代(12km/l)1000円、汲んだ海水40リットルなので、実はショップで買う人工海水(既にRO水に溶けたもの)が安い。
安全性:最初はRedSeaのテストキットを持って行ってその場で安全性を確認してから汲もうと思ったが、父が心配してついてきてくれたのでテストは後回し。結果としては硝酸塩0。ただし、天然海水は腐敗するのも早いので、数時間以内に使う必要がある。雑菌についてはいまのところ不明。
残存酸素容量:実際に計ったわけではないが、おそらく以外と低い。磯採取に行った後、充分に海水を汲んできたつもりでも、自宅に着く前に魚が死んでいたという経験がある方は意外と多いはず。
その他:おとといの海水は濃度がかなり低かった。週前半の大雨が影響している可能性が高い。
天然濃縮海水

天然濃縮海水はいろんな所から出ていますが、僕が実際に使ったことがあるのはアクアレイのインドネシアダイレクトです。
濃縮海水の利点は天然海水の利点と重なりますが、それに加えて雑菌が繁殖している可能性がきわめて低いということがあると思います。大抵の雑菌は海水濃度が高すぎるため、細胞内の水分を奪われて死滅していることだとおもいます。
あとは、一度に大量の海水を作る必要があるときに便利です。水槽の立ち上げ時、900x450x450のオーバーフロー水槽だと180リットル近い海水が必要ですが、濃縮海水があればRO水で割るだけです。魚水槽であればカルキ抜きした水道水を使ってしまうのもありだと思います。
細かくみれば
代金:各社様々な濃縮海水を作っているので一概に言えないが、アクアレイの濃縮海水は割合コストパフォーマンスが高い。しかし、「溶かす塩」と比べれば3倍から10倍のお金を払っている計算になる。普通の水換に使うとなれば相当お金がかかる。
安全性:前述の通り、雑菌が生き延びている可能性はかなり低い。正しい比率で水を足せば、成分的にはほぼ天然の海水と同じ。ただし、事前に準備する水の量が多すぎると薄い海水になってしまう。低濃度の海水は特にサンゴにとっては致命的なので、見積もりを誤るとダメージ大。
残存酸素容量:基本的に事前に作成した水のORPとほぼ一緒のはず。
その他:濃縮海水は生成時にカルシウムが沈殿してしまうので、使うときにカルシウム添加剤でカルシウムを補う必要がある。普通のカルシウム添加剤だと薄すぎて全然足りない。経験的には20リットルの濃縮海水でブライトウェルシリーズのカルシオン500mlボトル1本必要。LSS×東海大学が開発した濃縮海水はカルシウム添加剤がついてきている。
自宅に2m×1mくらいの風通しが良く直射日光が当たらない場所があれば、農作業用の黄色く大きいタンクを買ってきて、そこで濃縮海水をRO水で割るというのが一番使いやすいと思います。水槽をたくさん持っている人には意外といい方法かもしれません。
人工海水

銘柄が星の数ほどなくとも、両手両足の指以上の数があるので一概にはいえませんが、やっぱりお気楽な手段だと思います。
保管場所に困らなければ、2~3銘柄の塩を用意しておき、必要に応じて使い分けるという手もあります。
たとえば、魚を薬浴させなければいけない場合、すぐに用意できる必要があります。RedSeaの塩は溶けきるまでに時間がかかるので、その目的には使えません。大抵、塩の値段と溶けきる時間は反比例するので、薬浴用には安くて早くとける人工海水、水槽にはそれなりの人工海水と使い分けるのがいいかなと思います。
代金:各自の懐次第。持ち運びを考えると人工海水は通販で買うのが一番いいと思います。高い塩でも半額近い値段で販売している店もありますし、大抵送料無料、しかも玄関先まで持ってきてくれます。当然、内容量が多いパッケージほどコストパフォーマンスは良くなりますが、湿気対策を充分に取らなければ品質が落ちてしまいます。
安全性;雑菌類はゼロですが、重金属類が混ざっている可能性が専門誌などで指摘されています。ロット毎のばらつきも多く、同じ銘柄でも溶けた海水の成分が一致しないこともあります。しかし、少なくとも重篤な問題が起きる可能性は三者の中で一番低いと思います。
残存酸素容量:濃縮海水と同じく水次第。溶かすときにエアレーションを推奨する人もいますが、エアレーションをするくらいなら、水中ポンプで塩の成分がすべて溶けきるようにすることの方が大事ですし、かき混ぜるだけでもそれなりに酸素が溶け込んでくれます。
その他:以前にも触れましたが、塩を買ったら小分けしておくと便利です。使う度に計量していると塩がどんどん水分をすって、最後の方は使い物にならない塩になっていることもありますし、一度に小分けしておく方が毎回計量するよりも楽です。もっとも、炊飯器附属の計量カップのように、人工海水にも計量カップがついてくれば別ですが...
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短い経験で塩を語るなんて生意気ではありますが、ショップ毎に聞いてみた感想や、自分の経験をちょっとまとめてみました。