ゼオビットで提供されるバクテリア剤 ZEObak には、硝化細菌のほか、硝酸から窒素を作り出す反硝化細菌に加え、リン酸を重合体(リン酸が鎖状につながった分子量の多い、つまりスキマーで漉し取られやすい分子)の形で蓄積するポリリン酸蓄積細菌が含まれていることについては、以前も説明したと思います。
反硝化作用やゼオライトを用いたアンモニアの吸着により、水槽内の硝酸塩についてはほぼ0ppmまで達成することができましたが、リン酸についてはまだ効果的に減らすことができていません。
ポリリン酸蓄積細菌を使ったリンの回収については、下水処理などにも使われており一般的なシステムですが、ポリリン酸蓄積細菌はリン酸を取り込む際にマグネシウム(Mg)とカリウム(K, 英語ではポタシウム)を必要とし、また一定濃度の範囲でのみポリリン酸蓄積細菌が機能するため、ZEOvitにおいては水槽内のMg, K濃度を一定に保つ必要があります。
従って、定期的にMgとKの濃度を測定し、不足分は定期的に添加する必要があります。
マグネシウムについては各社から様々なテスターが販売されており、価格もまちまちですが、カリウムのテスターについてはほとんど種類がなく、ホビー向けで国内で手に入るのは ELOS のポタシウムテスターか、ZEOvitのカリウムテスターくらいしかありません。
リン酸塩が減らない原因を突き止めるには、まずMgとKの濃度を測定し、それぞれ規定の範囲内(Mg=1250~1300ppm, K=380~400ppm)に収まっているか調べることが必要です。
そこで、今回カリウムのテスターを購入し、水槽内のカリウム濃度を調べてみることにしました。
まずはZEOvitのカリウムテスターを購入しようと思い、まもなく残りが無くなる ZEObak と ZEOstart2 とともに、ゼオビットキャンペーンの10月分1割引クーポンで購入することにしました。
しかし、申し込んだその日に受け取り先となるコーラルタウンに行ってみると、大変残念なことに販売代理店のLSS研究所にはZEOvitシリーズのカリウムテスタの在庫がないとのこと。
しばし考えた後、どこかでELOSの試薬にカリウム試薬があったというBlogを見たことを思い出しました。
コーラルタウンの店長はLSS研究所と太いパイプをもっているので電話で聞いてもらったところ、ELOSの試薬はあるという返事が(ちなみに、ELOSの日本代理店はLSSです)。例のBlogでは判定結果が見にくいという話が載っていましたが、価格もZEOvitの試薬より安いですし、ドイツから取り寄せるのにどの程度時間がかかるのかわかりませんので、ELOSの試薬をつかってみることにしました。
小さな動物園-ELOS
ELOSのポタシウム試験薬です。
ELOSはイタリアの会社ですが、外箱はさすがイタリア製と思わせる作りになっています。
小さな動物園-用具一式
用具一式です。
驚いたのは、ボトルが一本ついていること。
実はこの中身、いわゆるRO/DI水です。
RedSeaのヨウ化物(I2)テスターの場合、RO水は自分で用意しなければなりませんが、最初からRO水が付いてくるのはよく考えられていると思います。
ただ、シリンジ(注射器)のデザインは良いのですが、はっきり言って使いにくいです。
小さいシリンジほど使いにくいので、0.5mlのような微量の液体を計るときにはいつも使っている駒込ピペットを使いました。
もし、RedSeaの小さいシリンジ(マグネシウム、アルカリティに附属)が余っているようであれば、それを使った方が効率的です。
小さな動物園-試薬
作業手順としては次の通りです。
1)海水を0.5ml測り、一本目の試験管(写真左)に入れる。
2)純粋を規定量測り、二本目の試験管(写真右)に入れる。
3)附属のスプーンを使い、試薬を二本目のボトルに入れ、良く攪拌する。
4)一本目の試験管を判定用紙の黒丸の上に置く。
5)指定のシリンジを使い、二本目の試験管から試薬を注入する。
6)5)で用意したシリンジ内の試験薬を一本目の試験薬に一滴づつ滴下する。
7)良く攪拌しつつ滴下を続け、試験用紙の黒丸が確認できなくなるまで作業を続ける。
8)黒丸が見えなくなった時点で作業終了。
作業が終了したら濃度の判定です。
小さな動物園-判定
判定は、このように判定用紙をたてることで行います。
他の試験薬と違ってユニークなのは、試験薬を追加し黒丸が見えなくなった時点での水面の高さでカリウム濃度を判定するところです。
これがRedSeaの試薬であれば、おそらく大きなシリンジに試験薬を注入し、滴下を行い、黒丸が見えなくなった時点で残った試薬の量で濃度を判定するように作ると思います。実際、マグネシウムとアルカリ度の判定には残った試薬の量で濃度を判定するようになっています。
小さな動物園-判定拡大
拡大写真です。
大雑把ですが、水槽にはカリウムが400ppm以上溶け込んでいるようです。
つまり、水槽内には規定量のカリウムが溶けているということです。
マグネシウムについては以前測定し、一定期間における消費量を計算することで日々の添加量を求め、毎日添加しており、こちらも規定量に達しています。
となると、他の原因を探る必要がありそうです。
もしかしたら、ポリリン酸蓄積細菌が足りず、残り餌から発生したリン成分を処理できないのかもしれません。
一方、ZEOvitのフォーラムを見てみると、僕と同じくリン酸塩だけ減らせないユーザがいるようで、ZEOvitの開発者から添加剤の使い方について細かい指示が行われているようです。
その指示とは、Coral Vitalizer の使用をしばらくやめる、という内容でした。
まずはこの指示に従いつつ、餌を与える量についてはいままで以上に注意深く観察しながら与えたいと思います。