実は直前まで「趣味と日本人」というタイトルで色々書いていたんですが、なんだか終わりが見えない文章になりそうなので、そちらの原稿は一時保存して別の機会に譲り、簡潔に書き直したいと思います。
なぜ、アクアリウム製品はヨーロッパ、アメリカ製品が多いのでしょうか。もちろん中国や台湾、インドネシアなどASEAN諸国製の商品も多いですが、ASEANの国々は世界の工場であり、物を安価に製造できるだけであり、決してそこにいる人たちが趣味としているわけではありません。
理由は単純で、ヨーロッパ諸国やアメリカは、大人の趣味を大事にしているからだと思います。
たとえば鉄道模型。
日本では子供の趣味に分類されがちですが、海外では大人の趣味として認められています。もちろん、子供がやってもかまいませんが。
鉄道模型はお金と場所、それに時間を必要とする趣味ですから、一生つきあえる趣味の一つです。なので海外、特にイギリスやドイツあたりでは自宅の一室や屋根裏のスペースを利用して、線路を敷き、シーナリー(建物や樹木など、風景を作り出す模型)を配置し、自分の好きな列車を走らせます。列車の編成にしても実在するものを忠実に再現するひともいれば、古今東西様々な列車を混ぜて走らせる人もいるでしょう。
一方、日本はどうでしょうか。
日本では大人になっても、いつまでも続けることができる趣味、語り始めたら止まらない趣味を持っている人って、ごく少数だと思います。
日本人だって、昔は大人でも趣味を持っていたのではないかと思います。
しかし、高度成長期から現在まで続く残業が趣味に割く時間を取り上げ、また進学や受験勉強が「趣味の終わり」というゴールを作ってしまったのではないかと思います。その結果、履歴書の趣味欄には「映画鑑賞 音楽鑑賞 読書」とみな同じことしか書けなくなってしまったのではないかと思います。もちろん、映画鑑賞だって、音楽鑑賞だって、読書だって立派な趣味です。ただ、趣味と言う以上、一つくらいは自慢できる趣味が必要ではないかというのが自分の意見です。
ちょっと危険な発言ですが、日本に介護を必要とする老人が増えてきているのも、趣味と関係するのではないかと思います。もちろん、一口に介護といっても、痴呆だけでなく肉体的、身体的傷害や限界もあるので、無趣味と介護を単純に結びつけることはできませんが、老後も楽しめる趣味を持っていれば、もっと有意義な老後を送ることができる人がいるのではないでしょうか。
話は変わりますが、ロケットと飛行機のエンジンを除き、世界でもトップレベルの技術を持っている日本が、なぜ高性能で驚くような機能を搭載したアクアリウム商品を開発しないのでしょうか。たとえば、オーストリアのVERTEXという会社はIlluminaというLEDライトを開発していますが、そこには小型のマイコンが搭載され、単なる照明ではなく、日の出、日没、月の満ち欠け、そして雷まで再現できる機能が搭載されています。また、イスラエルのRed Seaは Aquatronica という、アクアリウムで必要となる各種センサや機材を一括して制御できるシステムを開発しています。
これらのシステムは、日本でも開発できますし、開発すれば一歩進んだ製品ができるのは間違いないと思います。価格だって、輸入品の6割程度に抑えることが可能でしょう。先に紹介したIlluminaの上位機種は、日本で購入すると28万円ですが、オーストリアだと現在の為替レベルで20万切ります。でも、開発できないんですよね。日本では。
理由は単純で、市場が狭いからです。
また、趣味を生涯学習の一つとして位置づけられないからです。
寿命が延びたとしても、何のため生きているのかがわからない日々を過ごし、また介護のため相当な労働力を割かなければならない状況になると思います。
日本では大人のための趣味市場がニッチなため、だれもそこに参入しようとしないからです。
これは、アクアリウムだけでなくどんな趣味にも当てはまると思います。
しかし、趣味はいつからでも始められます。
どんな趣味であれ、法や秩序を乱さないものであれば、その趣味をお互いに尊重し、差別することなくむしろ尊敬できるような、そのような時代がこないものかと思っています。