先日、B-BOX八潮店で在庫一掃処分セールで販売されていた、ナイトレイトリアクターを購入した、というお話をしました。
ナイトレイト(Nitrate)とは硝酸塩の事で、分子式の中にNO3を持つものの総称ですが、海水魚の世界では亜硝酸NO3、硝酸NO2のことをさしているようです。
一方、リアクター(reactor)とは、化学の分野では何らかの反応をさせる機器全般のことを指します。
従って、ナイトレイトリアクターとは、硝酸塩反応装置といった感じに訳すことができそうです。
実際には何を行うかというと、ナイトレイトリアクターに入っている化学物質を使用して、硝酸NO2を窒素N2へと変化(脱窒といいます)させる機器です。バクテリアが十分に繁殖した水槽では、魚にとって猛毒であるアンモニアNH3およびアンモニウムイオンNH4をシュードモナス、ニトロソモナスの各バクテリアを使用し、亜硝酸そして硝酸へと反応させます。
硝酸NO2も決して魚にとって安全な物質ではありませんが、50ppmくらいまでならよほど硝酸に敏感な魚で無い限り絶える事ができますが、サンゴの飼育、とりわけミドリイシなどの造礁性サンゴにあたっては硝酸塩すら成長を阻害する物質となり、限りなく0に近い海水を維持する必要があります。
ナイトレイトリアクター自身は目新しい装置ではなく、おそらくかなり前から存在していたのですが、その取り扱いの難しさ故に普及することがなかったようです。では、なにが難しいかというと、ナイトレイトリアクター内部で脱窒を行うバクテリアの繁殖をコントロールする必要があるからです。
では、どのようにしてコントロールするのかというと、Redeoxセンサ(日本ではORP(Oxidation-reduction Potential、酸化還元電位)と呼ばれることが多いようです)の値を見ながら、リアクターに取り込む(あるいははき出す)海水の量を調整する必要があるからです。仮にバクテリアの過剰繁殖が進んでしまうと、今度は硫黄化合物を生成してしまいます。流量の調整は非常に面倒な作業で、リアクターの他にORPメータをそろえる必要があります。
従って、現在ではナイトレイトリアクターよりも、AZ-NO3のような、脱窒作用を促す薬剤を用いて硝酸を安全な窒素に変化させることが一般的となっています。ただし、AZ-NO3の使用は注意が必要で、使いかたや使用環境が不適切だと、生体に影響を与えることがあります(過去に「AZ-NO3の恩恵と恐怖」というタイトルでメモを残しています)。
しかしながら、MMC企画が輸入代理販売しているアクアトロニカ社のアクアリウムコントローラを使うことで、比較的システマチックにナイトレイトリアクターを操作することが可能となります。
アクアリウムコントローラには、オプションとしてRedoxセンサーとインタフェースユニットが販売されていますから、(従来の環境に)これを追加購入することで、ナイトレイトリアクターの制御を行うことが可能となります。
たとえば、ナイトレイトリアクターに接続したRedoxセンサの値が-200mv以下に成ったときには、リアクターの電源を切るなどのコントロールが可能となります。また、1日、あるいは一週間でのRedox値の変化を見ることで、バクテリアの繁殖状況をつかむことができます。
小さな動物園-ナイトレイトリアクター
これがナイトレイトリアクターです。
今回購入したのは、LSS研究所がREEF OCTOPUSブランドで販売しているナイトレイトリアクターです。
これは水槽の縁に掛けて使うタイプですが、床置き型のタイプもあります。
構造としてはカルシウムリアクターとほぼ(というか、全く)同一です。
唯一の違いは、カルシウムリアクターには、二酸化炭素を取り込むためのコネクタが付いている点です。
ナイトレイトリアクターには、センサーを取り付けるための取り付け穴があります。
使用時は樹脂製の棒で塞いでありますが、これを取り外しRedoxセンサと交換します。
もちろん、Redoxセンサは使用前に校正しておきます。
準備ができたら、サイフォンの原理を用いてリアクター内部に海水を取り込み、満水になったら電源を入れます。
さて、運転を開始したあとは、Redox値を見ながらはき出す処理水の量をコントロールします。
本当は濾過のように、大量の海水を一度に処理できれば良いのですが、最初の段階では1秒に1滴ないし2滴程度の海水しか処理できません。ただし、バクテリアの繁殖が十分に進めば、もう少し大量の海水を処理することも可能かと思います。
小さな動物園-結果
では、ナイトレイトリアクターで処理した海水を、RedSeaの試薬を用いて調べてみます。
使用した試薬はNitrate(NO2)です。
水槽内の海水と、リアクターから出てきた海水それぞれを比較しました。
左側が水槽の水、右側がリアクターで処理した海水です。
ご覧の通り、処理した海水では硝酸の反応がありません。
ここまで完全に処理できるとは思っていなかったので、正直びっくりしました。
数回繰り返し計測しましたが、いずれも0ppmです。
ホビーレベルで、しかも視覚的に判断するため精度の問題は残りますが、性能としては文句がありません。
さて今後ですが、まずはリアクターの電源をコントローラから制御できるようにして、バクテリアの異常繁殖が進んだ場合にはリアクターの電源を切るような制御を行ってみたいと思います。可能であれば、Redoxの値を参考に、はき出す海水の量をコントロールするような事もやってみたいのですが、現在それを可能とする機器がありません。
もしかしたら、最近販売されたドーシングポンプを使えば可能かもしれません。
いずれにせよ、何らかのコントロールができるようにしたいとおもいます。